仲野マリの気ままにシネマナビ online

投稿誌「Wife」に連載中の「仲野マリの気ままにシネマナビ」がWebの世界に飛び出しました!

★「Wife」は創刊50年の歴史を持つ投稿誌です。 http://www.wife.co.jp

阿修羅城2003ポスタ-
Ⓒ2015 ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』/松竹、ヴィレッヂ


劇団☆新幹線と染五郎のコラボで生まれた
いのうえ歌舞伎の真骨頂!
惹かれあう男と女の横顔に潜む鬼の影

作: 中島かずき
監督:いのうえひでのり
配給:ヴィレッヂ/ティ・ジョイ
封切:4月11日(土)より全国ロードショー 
映像制作:イーオシバイ
舞台製作:松竹
Ⓒ2015 松竹 ヴィレッヂ

ストーリー●
時は文化文政。
江戸の闇にまぎれ、人の姿を借りた鬼たちが、
人を喰らい、人の世を滅ぼそうとしている。
それに対し、人間側も
特務機関「鬼御門(おにみかど)」を組織し、対抗していた。
病葉出門(わくらば・いづも=市川染五郎)はその鬼御門の中でも
「鬼殺し」の異名をとった辣腕剣士だったが、
5年前ふっつりと姿を消し、今は鶴屋南北の一座に弟子入りしていた。
 
その一座の小屋に、
ある日逃げ込んできた謎の女・つばき(天海祐希)。
彼女は鬼御門の長である十三世阿倍清明(近藤芳正)の
殺害現場に居合わせていた。
つばきは無実を訴え、背中のアザを見せて、
出門に「このアザの意味と自分の過去を探してくれ」と頼むのだった。

見どころ●
劇団☆新感線の舞台を、
ライブ感そのままに映像化したゲキ×シネ。 
「阿修羅城の瞳」は初めて映画館でテスト上映をした
ゲキ×シネにとって原点ともいうべき作品だ。

とにかく殺陣が半端ない。
1ミリもゆるがせにしないハードボイルド。
重量級のアクションを間近でとらえるカメラワークが
思わず身をのけぞらせるほど身近にその迫力を伝える。
加えて、
随所にちりばめられる、笑いのツボ! そして音楽!ダンス! 
絶対に客を飽きさせないぞ、というシーン展開の速さには、
執念さえ感じられる。
 
その分、物語は単純な勧善懲悪かと思いきや、
冒頭でいきなり裏切り勃発! 
「鬼の軍団vs鬼御門」を軸にしながらも、
登場人物はそれぞれが闇の部分を抱え、
一筋縄ではいかない展開が続く。

俳優陣も適材適所、いい味を出している。
特に、市川染五郎は、
歌舞伎俳優としての経験と実力をいかんなく発揮。
身体能力もさることながら、
場面場面で三枚目から正義の味方、殺人鬼、そして女への純愛、と
多面体の主人公・出門を見事に表現。
演じ方によっては単に場面をつなぐ狂言回しになってしまうところ、
男の色気とスターのオーラで空気を支配した。
後半、出門が鬼御門を去った理由に
つばきが関係していたことがわかったときの衝撃も、
波動となって観客に伝わってくる。
 
対する天海祐希、
前半は、「予感」を封じこめながら自分の本当の姿を探し求めるつばきを、
ひたむきに生き、悩み、恋する等身大の女性として演じ、大いに共感を呼んだ。
だからこそ終盤、
真の姿になったときの無表情との間に落差が生まれ、
あたかも弥勒のごとき輝きを放って一瞬で「転生」を理解させたのだ。

運命にあらがうように生き切る出門とつばきのラストシーンは、
欲望のため、快感のため、生きるため、
いつだって鬼にも蛇にもなる人間のあさましさが、
さながら愛を触媒にして昇華し、結晶となったかのようだ。

今回、劇団☆新感線35周年記念として、
デジタルリマスター版でよみがえった本作品。 
よみがえらせるだけの価値はある。
15年経ってますます人を酔わせる名作である。

*ライブビューイング系の映画は特別料金が設定されることが多いが、
 この作品は通常の映画と同じ、1800円で見られる。
 175分と、約3時間ノンストップだが、長さを感じさせない。 
 22歳以下は1000円で見られる「ヤングチケット」もあるので、
 気軽に足を運んでみては?
 


阿修羅城2003
Ⓒ2015 ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』/松竹、ヴィレッヂ

このブログを始めたのが、2014年の2月。
隔月刊の「Wife」が3カ月に1回発行の季刊になるのを受けて、
タイムリーに封切映画をご紹介することが難しくなると考え、
ウェブでも展開しようという試みでした。

それによって雑誌「Wife」のページも
投書は大幅リニューアルするつもりでしたが、
結果として、
やはり発行時期に合わせて封切映画を紹介するという形は
あまり変化せず今に至ります。

Webのほうも、
「ロードショウ」にこだわると、
試写を見て、そこからセレクトして掲載しているために、数に限りがあり、
更新の回数を容易に増やすことができません。

との差別化があまりないのであれば、
逆にWebのほうをリニューアルしよう、ということで、
この4月から、
以下のようにカテゴリーを増やし、掲載範囲を広げようと思います。

「ロードショウ」=これまでアップしてきたように、公開日に合わせて新作映画を紹介。
           (必ず試写を見て、映画を紹介。作品画像あり)

「新作情報」=上記を同じく新作映画の紹介だが、映画会社のプレスリリースをもとに
          試写視聴なしでの紹介。作品画像はある場合とない場合がある)

「映画祭」上映回数が少ない、今後の配給が決まっていないなど、
         今後上映される見通しがなくても、観て面白いと思ったものは
         試写・一般上映どちらでも載せる。取り寄せ可能なものは画像あり。
          
「過去の作品」=TV放送、DVDなどで改めて見直した映画のレビュー。

「Wifeアーカイブス」=2006年12月発行323号から2013年6月発行362号まで
               隔月刊「Wife」に連載した作品を再掲載。

「転載」=過去、個人ブログ「ガムザッティの感動おすそわけブログ」で掲載した
       過去の映画レビューを再掲載あるいは当該レビューページの紹介。

赤字のカテゴリー・・・現在の動き(映画館でこれから見る映画の情報)
青字のカテゴリー・・・過去の作品(DVDなどで楽しむ、あるいは
             リバイバル上映で楽しむための情報)

当分は試運転状態ですが、
まずは頻繁に更新していくことを主眼としたいと思います。
これからも、「仲野マリの気ままにシネマナビonline」をよろしくお願いいたします。

3組の夫婦と1人の男が織りなす熟年恋愛の寓話

愛して飲んで歌ってメイン
Ⓒ2013 F COMME FILM – FRANCE 2 CINÉMA – SOLIVAGUS


監督:アラン・レネ
原案戯曲:アラン・エイクボーン「Life 0f Riley」(お気楽な生活) 
配給:クレストインターナショナル 
封切 :2月14日(土)岩波ホールほか全国順次ロードショー
公式サイト :http://crest-inter.co.jp/aishite/

ストーリー●
とある春の日。
医師のコリンとその妻カトリーヌは、
素人芝居に出るべく夫婦で稽古に余念がない。
そこへ、友人ジョルジュが余命いくばくもないという連絡が入る。
「医師の守秘義務」をかたくなに守ろうとするマジメ人間コリンに対し、
おしゃべりおばさんのカトリーヌはすぐさまタマラに電話。
タマラの夫・ジョルジュはジャックの大親友だったのだ。
ジャックはひどく嘆き、
最近ジョルジュと離婚した元妻モニカに、
元夫と最期の時を過ごしてもらいたいと懇願しにいく。
すでに農夫シメオンとの新生活に入っていたモニカは、
初め渋っていたものの、シメオンを説き伏せジョルジュのもとへ。
一方、
カトリーヌはジョルジュを芝居に引っ張り出すことを提案する。
「ジョルジュを励まし、生きる希望を与えたい!」
芝居の中でラブシーンを演じるジョルジュとタマラは何やらいいカンジ。
今までタマラを顧みず浮気ばかりしてきたジャックにも、
妻の変化がどうにも気になり始めてくる。
そこにカトリーヌとジョルジュとの「過去」が明るみに!
春夏秋冬を穏やかに暮らしていた3組の夫婦の暮らしが、
思いがけずやってきたつむじ風に翻弄される。

みどころ●
2014年3月、 名監督アラン・レネ氏が91歳で死去した。
 「去年マリエンバードで」など、難解な作風でも知られるが、
その一方で軽妙なユーモアやエスプリが大好きだった。
そんな彼がこよなく愛したのが、イギリスの演劇作家アラン・エイクボーン。
この「愛して飲んで歌って」は、
そのエイクボーンの「お気楽な生活」を原作にしている。 
カトリーヌ役のサビーヌ・アゼマは、レネ監督の妻。

戯曲を原作としているせいか、
書割にブルッチのバンド・デシネ(漫画)を用い、
室内も家の庭も、敢えて「つくりもの」感を強調。

それによって熟年夫婦のやりとりは
「いつ、どこで、誰が」がずんずんそぎ落とされていく。
エッセンスがとぎすまされた結果、
大人の恋のドロドロやえぐみは消えて、
ある種大人のおとぎ話のように微笑ましい寓話になった。

それでもリアルさが保たれているのは、
良妻賢母を演じてきたタマラ(カロリーヌ・シオル)が
老いらくの恋に自分を解放していくさまが
大きなエネルギーを生み出しているからではないだろうか。

リッチな浮気男。
KYなマジメ一辺倒男。
恋多き女。
良妻賢母に命をかけてきた女。
自己チュー女。
自己チュー男。

3組の夫婦が最後におさまるところはどこなのか。
そのとき、3人の女友達の友情はどうなるのか。
ちょっと惜しいような、でもほっとするような、味わいのあるラストが
私は大好きだ。

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