平安のゲリラ戦士・将門御前が背負った夢

蒼の乱
 Ⓒ2015 ゲキ×シネ『蒼の乱』/ヴィレッヂ・劇団☆新感線


作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
配給:ヴィレッヂ/ティ・ジョイ
封切: 5月9日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.aonoran.com/

ストーリー●
渡来の女性・蒼真(天海祐希)は
国家大乱という不吉な占いをして追われているところを、
坂東武者の将門小次郎(松山ケンイチ)に助けられる。
故郷の平和と安定を純粋に夢見る小次郎。
そこへ西海で暗躍する伊予住友(粟根まこと)が現れ
「東西同時に蜂起して都を脅かそう」と小次郎に持ちかけてきた。
蒼真に不安がよぎる。
彼女には、故国での蜂起に失敗し、
仲間の大半を失うという辛い過去があった。

みどころ●
今年創立35周年を迎える劇団☆新感線。
重厚なテーマでありつつスピーディーな殺陣やコミカルな場面、
華やかなミュージックシーンを織り交ぜた舞台は、
若者中心に絶大な支持を得ている。
そのライブ感を損なうことなくフィルムに収めたのが「ゲキ×シネ」だ。
 
今回は、平安中期に起きた平将門の乱・藤原純友の乱をモデルに、
中央政治に蹂躙される辺境の民や渡来人たちの運命を描く。

宝塚OG天海祐希による
元男役ならではの凛々しい演技は輝くばかりだ。
天皇とアイヌの族長の二役を演じた平幹二朗は、
不満分子を巧妙に操り、分裂・弱体化させる政治家のいやらしさを際立たせた。
そうした「権力」サイドの手練手管に
まんまとのってしまう純朴かつ単細胞の将門小次郎の憎めなさを
松山ケンイチが好演。 
 
誇りか、生活か。勝利か、命か。
「テロとの戦い」が安易に叫ばれる今だからこそ、
とりわけ心に響く歴史ファンタジーである。