浮世絵から飛び出す江戸パワー!
北斎の娘にして片腕・お栄の青春


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Ⓒ2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

監督:原 恵一
原作:杉浦日向子
配給:東京テアトル
封切 :5月9日(土)よりTOHOシネマズ日本橋、
テアトル新宿ほか全国ロードショー
公式サイト :
http://sarusuberi-movie.com


ストーリー●
文化11年、江戸。
浮世絵師・お栄(杏)は、
父であり師匠でもある葛飾北斎(松重豊)とともに、絵を描いて暮らしていた。
別居して暮らす母・こと(美保純)は、
絵を描くこと以外何にも目に入らぬ二人の、
散らかしほうだいの暮らしを心配するが、
当のお栄はどこ吹く風。
「親父と娘と筆2本、箸4本あればどこででも食っていけるさ」と
男社会の絵の世界で、まなじり決してまい進する。
女だてらに臆せず枕絵を描きもするが、
そこは生娘、「絵はうまいが味がない」などと言われ壁に突き当たる。
そんなお栄がもっとも心を砕くのが、
妹のお猶(清水詩音)のことだった。
生まれつき目が見えず、
琵琶の勉強のため尼寺に預けられているお猶を
ときどき寺に訪ねては連れ出し、
目の見えないお猶に江戸の街の風景を語って聞かせるのだ。
ある日、お猶がことの家に戻された。病気だった。
日に日に弱るお猶に、
父の北斎はどうしても会おうとしない。
お栄は父を「いくじなし!」となじるのだった。

みどころ●
江戸風物の漫画を描かせたら右に出るもののいない
早世の人気漫画家・杉浦日向子の作品のアニメ化で、
早くから完成が待ち望まれていた。
ストーリーはお栄とお猶の姉妹愛を軸にはしているが、
映画の魅力は細密に再現される江戸の風景である。
両国橋の上でお猶は行き交う人々の「音」を楽しむが、
お栄はお猶の「音」を、写生のために記憶する。
原監督は、お猶の耳と、お栄の目を通して、
江戸の街をすみずみまで再現し、提供しようとしているのだ。
また、
北斎が描いた竜が魂を持ち、絵から飛び出していくところや
絵に描かれた百鬼や妖怪たちが動き出すところも圧巻。
何より、オープニングである。
江戸の街を闊歩するお栄とバックに流れるロック調の音楽が
実に塩梅よくかけ合わさってわくわくする。
椎名林檎が手掛けるエンディングテーマとも違和感がない。

このところ、日本画を見る機会が多いのだが、
「鳥獣戯画」や「北斎漫画」は言うに及ばず、
日本画そのものが漫画の原点であることを
ひしひしと感じている今日この頃。
アニメファン、浮世絵ファンは必見である。

声優には上記の面々をはじめ、
濱田岳、高良健吾、筒井道隆、麻生久美子など俳優のほか、
人気落語家の立川談春も参加。

街並みに歌舞伎小屋の中村座が出てくるところなど、
歌舞伎ファンにもうれしい仕掛けになっている。

*お栄は「葛飾応為」の雅号を持ち、「吉原格子先之図」はよく展覧会に出品される。


 
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Ⓒ2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
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Ⓒ2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会