仲野マリの気ままにシネマナビ online

投稿誌「Wife」に連載中の「仲野マリの気ままにシネマナビ」がWebの世界に飛び出しました!

★「Wife」は創刊50年の歴史を持つ投稿誌です。 http://www.wife.co.jp

夫が女性になっていく・・・そのとき妻は?

リリーのすべてメイン
Ⓒ2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
 

 

監督:トム・フーパー  

配給:東宝東和

 

ストーリー●
コペンハーゲンに住むヴェイナー夫妻は画家同士。
内気なアイナー(エディ・レッドメイン)は風景画家として新進気鋭、
社交的な妻ゲルダ(
アリシア・ヴィキャンデル)は人物画を得意としていた。
ある日絵のモデルが来られなくなって困ったゲルダは、

体つきが華奢な夫に、脚だけモデルになってと代役を頼む。
ストッキングに脚を通し、ドレスを胸にあてた瞬間、
アイナーの全身に衝撃が走った。内なる「リリー」が動き始めたのだ。
318日、 TOHOシネマズ他にて全国ロードショー、R15+)

 

みどころ●
今から80年以上前、まだ安全性の確立しない性別適合手術を
世界で初めて受けたリリー・エルベの実話に基づく物語だ。
同性愛への偏見も強くトランスジェンダーやLGBTQなどの言葉もない時代。
自らも世間体に縛られ性別違和の現実に打ち震えつつも、
やがて自分らしく生きたいと走り出すリリーを、
レッドメインがうつむき加減の面差しや眼の動きで繊細に表現している。
苦悩するのは本人だけだはない。
「夫」が男でなくなる妻の衝撃はいかばかりか。
しかしゲルダは「リリー」の存在を認め、姉妹のように寄り添い支える。
寄り添いながらも「わが夫アイナー」が消えていく寂しさを振り払えない辛さ。
人間として人間を愛するとは? ゲルダの愛の形に感服する。

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Ⓒ2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

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Ⓒ2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

人種も時空も超えた「忠臣蔵」
グローバルスタンダードな騎士魂が炸裂

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©2015 Luka Productions.

監督:紀里谷和明
配給:KIRIYA PICTURES/ギャガ
封切 :11月14日、 TOHOシネマズ スカラ座他にて全国ロードショー
公式サイト :http://lastknights.jp/


ストーリー●
そこは腐敗政治がはびこる帝国が支配する世界。
悪徳大臣は権力をかさに強要する。
金満政治を嫌うバルトーク卿(モーガン・フリーマン)は、
賄賂を断って窮地に立たされ、
大臣に刀を向けたため斬首、領地も没収されてしまうのだった。
一年後、
城を追われた騎士達は身分を隠して暮らしながら、復讐の機会をうかがっていた。
隊長のライデン(クライヴ・オーウェン)は酒浸りの日々を過ごすとみせかけ、
油断を誘う。
いよいよ、宿敵を倒す日がやってきた。
彼らは難攻不落の城に潜入できるのか。

みどころ●
「仮名手本忠臣蔵」をベースにした本作品。
といっても、そこはハリウッド映画。
架空の世界、架空の国での物語に換骨奪胎してある。
当初登場キャラクターが全員日本人だったものを、
「日本の、特別な話として片づけられたくなかった」という紀里谷監督が
多国籍の俳優が違和感なく物語に溶け込めるように再構築した。

だから、さまざまな国や民族の名優たちが出演している。
浅野内匠頭はモーガン・フリーマン、大石内蔵助がクライヴ・オーウェン。
韓国の名優アン・ソンギは加古川本蔵という渋い役どころ。
日本からも原剛志が、清水一学を思わせる帝国側(吉良側)剣の達人を演じる。
寡黙な中に存在感が光る重要な役回りだ。

アクションありサスペンスありの中に、
正しい生き方(義)のため立ち上がる人々の物語が浮き彫りになる。
クライマックスの「討入り」は圧巻。
ダムのように立ちはだかる城壁をはじめ、
待ち受ける数々のダンジョンを前に
「彼ら」はひるむことなく立ち向かっていく。
 待ち受ける帝国側(吉良側)の剣の達人たちとの戦い、
特に伊原とオーウェンとの一騎打ちは
「奥庭泉水の場面」(竹森喜多八と小林平八郎の殺陣)をほうふつとさせる。

このように、
かなり大胆に筋を単純化しているようでいて、
原典を細部まで理解した上で練られた脚本は見事。
(この脚本、最初に書いたのはカナダ人である)

「忠臣蔵」をよく知る人は、
登場人物や有名なエピソードがどのように形を変えて姿を現すか、
あるいはどの設定が変えられているかを発見するのも楽しみの一つ。
逆に知らない人には、
「忠臣蔵」を理解する格好の機会になるのではないだろうか。

「ラスト・ナイツ」は
第28回東京国際映画祭に出品され、
公開にさきがけ10月にも上映されている。 

第28回東京国際映画祭のオープニング上映作品は
ロバート・ゼメキス監督の「ザ・ウォーク」でした。

レビューを「Cinema Art Online」に書いています。

この映画の主人公・フィリップ・プティは実在の綱渡り名人で、
ハリウッド映画「ザ・ウォーク」は、これをフィクションとして製作しています。
フィリップのことをドキュメンタリーとして映画にした作品が「マン・オン・ワイヤー」。
こちらは2008年にも公開されていて、私はこちらも公開時に観ています。
そのときに書いたレビューはこちら。併せてお読みくださいませ。 

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