仲野マリの気ままにシネマナビ online

投稿誌「Wife」に連載中の「仲野マリの気ままにシネマナビ」がWebの世界に飛び出しました!

カテゴリ: アクション

近未来のジャンヌ・ダルク、ガレキの上に立つ

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ⒸTM & © 2015 LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督:フランシス・ローレンス
配給:KADOKAWA
封切 :6月5日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー
公式サイト :http://hungergames.jp


ストーリー●
ハンガー・ゲームの歴代優勝者が集結した第75回記念大会の闘技場から、
危機一髪のところで救出されたカットニス(ジェニファー・ローレンス
)。
彼女が収容されたのは、第13地区の地下にある反乱軍の秘密基地だった。
13地区は滅亡したとされていたが、
コイン首相(ジュリアン・ムーア)率いる反乱軍が、
独裁国家パネムを打倒と新国家建設をめざし、
戦いの準備を進めていたのだ。
士気を高め人心をまとめるため、
革命のシンボルを必要としていた反乱軍は、
カットニスにその役を依頼する。
対するスノー大統領は反乱を未然に抑え込むべく、
カットニスを逃がすため捕らわれ人質になった
ピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)をテレビ番組に担ぎ出して
プロパガンダに利用する。
胸を引き裂かれるカットニス。
反乱軍はピータ救出作戦を実行するが、
その先にはさらなる過酷な運命が待っていた…。

みどころ●
映画の最大の魅力は、
なんといっても主人公カットニスを演じる
ジェニファー・ローレンスのかっこよさだ。
情に厚く、理知的で高潔な精神を持ち、かつ勇敢で美人。
息をもつかせぬアクションももちろんみどころ。

「二匹目のどじょう」を狙ってシリーズ化される映画は後を絶たないが、
1作、2作とも連続して大ヒットする映画はなかなかない。
すでに「ハンガーゲーム」は近未来のジャンヌ・ダルクとなった
カットニスの一代大河ドラマとなっている。

各地区からくじで選ばれた若い男女が
森でのサバイバルゲームに投げ込まれ、
最後の一人になるまで殺し合いをさせられる第1作は、
そのあらすじだけを聞くと
「バトルロワイヤル」の二番煎じのようでもあり、
あるいはバトル系ゲームを映画化しただけと捉えるむきもあった。

しかし
独裁国家における人民の疲弊や自由の蹂躙がもたらす苦しみ、
「殺さなければ生き残れない」というギリギリの選択を常に押し付け、 
巧みな情報操作で各地区の連隊を阻むやり方は、
すでに第1作から単なる娯楽を突き抜けて、
非常に政治的な要素を含んだ 極めて深い物語であり、
これを「娯楽作品」として全米年間興行第1位にさせた手腕は並ではない。

2作目は
「優勝者2人は恋に落ち、結婚し、
そして幸せに暮らしましたとさ」という虚構を演じさせられ
憎むべき独裁政府の広告塔となって国中を巡業させられる
カットニスとピータの葛藤を描いた。
「ウソの生活なんかできない」というカットニスと
 生き残るために何をすべきか冷静に考えるピータ。
「流されれば楽に生きられる。ほかの人たちの幸せなんてどうでもいい」
そうした誘惑に抗い続ける2人。
ついに「虚構」を捨てるが、ピータはつかまってしまうのだった。

その続きとしての、今回の3作目。
「レジスタンス」というタイトルが示すように、
これは反政府軍の戦いの日々の記録である。
ガレキの山、死傷者であふれる野戦病院、
人々を鼓舞するリーダーの演説…。
もはや「娯楽」を突き抜け「フィクション」も突き抜け、
今、世界中のあちこちで起きている市街戦の真っただ中に
身を置くような感覚になる。

汚れた身なりで無表情に労働へと向かう庶民と、
宮殿のような大統領府で優雅な生活を送る支配者たち。
1作目の公開から3年が過ぎた2015年。
ますます苛烈を極める地球上の貧富の差が
この映画の中にそのまま存在する。

互いに情報戦を制しようとプロパガンダ合戦に明け暮れる両者。
その裏で街ごと空爆され、すべてを失う庶民。

この戦いに、終わりはあるのか?

戦いの虚しさ、戦いの中で生きる苦しさを、
自らの問題として突きつけられる。
戦争映画として、秀作だ。

ちなみに、「FINAL」と 銘打っているが、「レジスタンス」は通過点。
「FINAL レボリューション」に続きます。 


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ⒸTM & © 2015 LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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ⒸTM & © 2015 LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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ⒸTM & © 2015 LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.


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平安のゲリラ戦士・将門御前が背負った夢

蒼の乱
 Ⓒ2015 ゲキ×シネ『蒼の乱』/ヴィレッヂ・劇団☆新感線


作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
配給:ヴィレッヂ/ティ・ジョイ
封切: 5月9日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.aonoran.com/

ストーリー●
渡来の女性・蒼真(天海祐希)は
国家大乱という不吉な占いをして追われているところを、
坂東武者の将門小次郎(松山ケンイチ)に助けられる。
故郷の平和と安定を純粋に夢見る小次郎。
そこへ西海で暗躍する伊予住友(粟根まこと)が現れ
「東西同時に蜂起して都を脅かそう」と小次郎に持ちかけてきた。
蒼真に不安がよぎる。
彼女には、故国での蜂起に失敗し、
仲間の大半を失うという辛い過去があった。

みどころ●
今年創立35周年を迎える劇団☆新感線。
重厚なテーマでありつつスピーディーな殺陣やコミカルな場面、
華やかなミュージックシーンを織り交ぜた舞台は、
若者中心に絶大な支持を得ている。
そのライブ感を損なうことなくフィルムに収めたのが「ゲキ×シネ」だ。
 
今回は、平安中期に起きた平将門の乱・藤原純友の乱をモデルに、
中央政治に蹂躙される辺境の民や渡来人たちの運命を描く。

宝塚OG天海祐希による
元男役ならではの凛々しい演技は輝くばかりだ。
天皇とアイヌの族長の二役を演じた平幹二朗は、
不満分子を巧妙に操り、分裂・弱体化させる政治家のいやらしさを際立たせた。
そうした「権力」サイドの手練手管に
まんまとのってしまう純朴かつ単細胞の将門小次郎の憎めなさを
松山ケンイチが好演。 
 
誇りか、生活か。勝利か、命か。
「テロとの戦い」が安易に叫ばれる今だからこそ、
とりわけ心に響く歴史ファンタジーである。 

「這い上がりたい男たち」の一発逆転は成功するか?

サンブンノイチ メイン
(C)2014『サンブンノイチ』製作委員会

映画『サンブンノイチ』
 
監督: 品川ヒロシ
配給: KADOKAWA 吉本興業
公開: 2014年4月1日【(火)エイプリルフール】全国ロードショー
公式サイト:  
http://www.sanbunnoichi.jp/

ストーリー●
キャバクラ「ハニーバニー」の店長・シュウ(藤原竜也)は
借金で首がまわらない。
その上一発当てて返そうと行った競馬場で、店の金を紛失してしまい、
鬼よりコワイオーナー・破魔翔(窪塚洋介)に合わす顔がない。
やむなく「川崎の魔女」と恐れられる闇金女王・
渋柿多見子(池畑慎之介☆)に金を借りて埋め合わせるも、
それが地獄の始まりで、シュウは執拗に返済を迫られる。
同じく「ハニーバニー」のキャバ嬢・まりあ(中島美嘉)は、
破魔翔にAV女優として売られそうになっていた。
人間の尊厳などかけらも認められない「クソみたいな人生」から
一発逆転で這い上がるためには、
もう手段を選んでいるヒマはない!
二人は銀行強盗を計画、
シュウはやはり借金まみれの人間である
弟分のコジ(田中聖)と店の常連・健さん(小杉竜一)を
仲間に引き入れる。
しかしコジと健さんは、まりあの存在を知らされていない。
分け前は、最初から「サンブンノイチ」ではなかった。
誰もが疑心暗鬼の中、なんとか自分の持ち分は増やしたい。
味方同士は敵同士? 騙し騙されるサバイバルゲームが始まる。

解説と見どころ●
この映画の本題は「銀行強盗」ではなく、「分け前」をどうするかだ。
それも、単に「シュウとまりあ」が「コジと健さん」を騙す、というような
単純な話ではない。
カネのない者同士の争いであったり、
搾取されまくる者たちが、支配する側のハナをあかす闘いであったり、
裏切り者は誰か、最終的に誰が勝つのか、まったくわからなくなる。
観客としては主人公たちの「這い上がりたい」思いに感情移入しながらも、
だからといって銀行強盗で億万長者でいいのか?という良心のうずきもある。
そのあたり、きちんと「落とし前」をつけるところがまたまた爽快。
それにつけても、光るのは窪塚洋介と池畑慎之介☆の怪演である。
「いかにも」な悪の権化を演じ、
迫力とリアリティでぐいぐいと場面を引っ張っていく。
また、深刻な役が多い藤原竜也のコメディセンスが存分に活かされているし、
KATTUNを脱退した田中聖も魅力的で、これからが期待される。
監督は芸人の品川ヒロシ。その関係もあってか、有名芸人が多数出演する。
レイザーラモンHGの渋い演技に注目だ。
前半、デフォルメされたカットの積み重ねとともにコント的な応酬が続くので、
ともすればセリフが上滑りしそうなきらいがあるが、
その「上滑り」までもが計算しつくされた「演技」だとわかる、
見事などんでん返し!
見終わった後、もう一度最初から見たくなる。


サンブンノイチ サブD
(C)2014『サンブンノイチ』製作委員会

サンブンノイチ サブC
(C)2014『サンブンノイチ』製作委員会

迫力満点!「劇団☆新感線」の舞台をスクリーンで! 
ゲキ・シネ10周年記念作品第2弾は、三浦春馬のダンスと歌がうますぎてツボ

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(C)2014ヴィレッヂ・劇団☆新感線


作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
作詞:森雪之丞

配給:ヴィレッジ/テイ・ジョイ
封切:3月29日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー

公式サイト: www.goemon3.com

ストーリー●
太閤秀吉が栄華を極めた時代。
天下無敵の大泥棒・石川五右衛門(古田新太)は、
女盗賊・猫の目お銀(蒼井優)とともに、
春来尼(高橋由美子)が本尊として守ってきた空海ゆかりの黄金の像を盗み出す。
ところが、
盗んでみれば黄金とはまっかなウソ。
お銀は落胆するものの、
実はこの像には空海が隠した黄金のありかを示す暗号が隠されているとわかり、
一味はその「お宝」探しを始める。
一方、
頭脳明晰な若き探偵・明智心九郎(三浦春馬)は
犯罪者である五右衛門たちを追い詰めていくが、
その過程で堺の豪商・蜂ヶ屋善兵衛(村井国夫)と手を組むことになる。
ところがこの善兵衛、
日本国を売っても儲けようという腹黒商人だった!

解説とみどころ●
ゲキxシネとは、
エンターテインメント界のトップを走る《劇団☆新感線》の人気舞台を
より多くの観客に届けるべく、

「まるで映画のように楽しめる作品」として、映画館で上映するという
新しい演劇映像のスタイル。 

単なる「劇場中継」ではなく、最新のデジタルシネマの技術を用い、
臨場感を増幅させる映像表現と音響技術により、
想像以上のライブ感と興奮が味わえる。


…などという小難しいことは横へ置いて、
次から次へと繰り出される音楽とダンスとアクションに身を任せていると、
気がつけば感情のるつぼ、カタルシスに浸っている…。
それがゲキ・シネの醍醐味である。

だから、今回も
「秀吉」「堺」「南蛮」「お宝」「五右衛門」といった
キーワードさえ押さえておけば、
あとは流されるまま、舞台の渦に向って飛び込んで行けばよい。

ゲキxシネは、常に大物ゲストの参加が話題になるが、
今回レギュラーの古田新太や橋本じゅんにからむのは、
三浦春馬と蒼井優。

特に三浦の歌声の美しさにはノックアウトである。
「タウンワーク」のCMでは
「きっと本人じゃないよね」とさえ噂されたほどの美声は、ホンモノだった!
彼の声がここまで伸びがあり美しく、音程も正確だとは。
本物のミュージカル俳優である浦井健治や村井国夫、高橋由美子を
向こうに回して、まったく見劣りがしない。

ダンスも殺陣にも切れがあり、見ているだけで幸せになれる。
テレビドラマでも映画でも引っ張りだこの三浦だが、
今後はミュージカル俳優としても、ぜひ活躍してほしい。


ZIPANG_PUNK縲€main
 (C)2014ヴィレッヂ・劇団☆新感線

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