仲野マリの気ままにシネマナビ online

投稿誌「Wife」に連載中の「仲野マリの気ままにシネマナビ」がWebの世界に飛び出しました!

カテゴリ: ドキュメンタリー

「俺もあとから行くからな」と言った上官が行ったためしはない!
~埋もれていた特攻の真実を集めて~


筑波メイン


監督:若月 治
配給・宣伝:シグロ
封切 :8月1日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


ストーリー●
茨城県笠間市には、
かつて戦闘機の教育部隊であった筑波海軍航空隊の司令部庁舎が、
「筑波海軍航空隊記念館」として保存されている。
ここで訓練を積んだ受けた84名の若者が、
沖縄戦のための特攻隊に編入され、60名が亡くなっている。
地元の有志達は記念館設立を機に「プロジェクト茨城」を立ち上げ、
自分たちの町にとってあの戦争はなんだったのか、
戦跡の保存や資料の収集に取り組み始めた。
特攻隊員で生き残った人々のうち、生存者は数えるほどしかいない。
一人ひとりを丁寧に取材し、
彼らの青春の日々と悔恨をあぶり出す。

みどころ●
茨城県笠間市の人々が、自分たちの町に埋もれていた戦争の事実を
丁寧に掘り起こしていくドキュメンタリー。
生き残った特攻隊員たちの証言も傾聴に値するが、
民家から出てくる戦時中の写真や資料にも目を見張る。
淡々とした中に、戦争の記憶を残そうという気概が見える。
そして、戦争を「かつてあったこと」ではなく
「そこに自分がいたらどうするか」をつきつめながら
証言者たちと対峙するメンバーの真剣な態度に胸を打たれた。


私は昭和30年代の生まれなので、
戦争中の話は本、マンガ、映画、テレビ、学校、親の話と
いろいろな形で聞いてきた世代だ。
だから率直に言うと、
それほど目新しい情報があるという映画には思えなかった。
しかし、
若い人たちはこの映画を通して、初めて知ることも多いだろう。
伝える、発信する、ということは、本当に重要なことだと痛感する。

戦後70年。
話せばつらい、と口をつぐんでいた人々が
今口を開かねば、と重い腰をあげている。
証言者たちは率直に、事実を次の世代に渡そうとしているように見えた。

戦争は特攻だけではない。軍人だけが戦争をしていたわけでもない。
戦争にまきこまれていった市井の人々、
その人の数だけ戦争の記憶があり、
その一つ一つのかけらをつなぎ合わせるようにして初めて、
戦争の真実のかたちがみえてくるのではないだろうか。

老獪と柔軟と好奇心
ジャンルの壁を颯爽と超える72歳が
若手アーティストと作品を生み出す瞬間


躍る能楽師メイン
 Ⓒ究竟フィルム KUKKYO FILMS

監督・撮影・編集:三宅 流
製作:究竟フィルム KUKKYO FILMS、contrail、株式会社アースゲート
配給:究竟フィルム KUKKYO FILMS
 
封切 :6月27日(土)より新宿K's cinemaにて公開、以降全国順次公開予定


解説とみどころ●
2012年、能楽師・津村禮次郎は70歳を迎えた。
古希を祝う記念能も「一つの通過点」に過ぎない、と
彼は少年のような瞳を輝かせて未来を語る。
一ツ橋大学の学生時代に初めて能に触れ、
女流能楽師・津村紀三子の弟子になる。
乞われて養子となり、若くして集団を率い、
ひたすら能の世界に没頭した壮年期。
40歳を過ぎたあたりから他ジャンルとのコラボにうって出る。
この映画は三宅流監督が津村禮次郎の5年に密着したドキュメンタリー映画だが、
単なる「老能楽師の一生」ではない。
才能と才能がぶつかりあい、融合しあって新作が生まれるその瞬間の連続。
企画出しから稽古風景、上演風景まで、ふんだんに目撃できる。

クラシックバレエのプリマであり、モダンバレエも手掛ける酒井はな、
キリアン率いるNDTに日本人として初めて入団、金森穣率いる舞踊集団Noismを経て
今はOptoを主宰、自らの世界を広げる小㞍健太。
NHKの子ども番組にも出演し、強靭な身体能力とポップなダンスデザインで人気の
森山開次。
舞踊集団コンドルズや劇団イキウメなどの作品にも関わる振付家・平原慎太郎。
パントマイムを駆使した演出が独特の小野寺修二。

溢れ出る若い才能たちの意見を笑顔で受け入れ、
他ジャンルの舞踊スタイルを一から学ぶ。
そこに能楽師としてのゆるぎない動きがスパイスに。
気がつけば、場を支配するのは、津村のほう。

津村だけが能面、能装束を身につけて
ガムランの調べに乗り、バリのガムランダンサーと共演する。
互いにしゃべるのは母国語。
丁々発止の戦いの場も、
親子で胸の内を語る場面も、
まったく違和感なく感じられるのはなぜだろう?

舞踊とは、生きること。
舞踊とは、語ること。
舞踊とは、つながること。

ジャンルにとらわれず、まっすぐに舞踊を極めようとする人々が
互いに互いをリスペクトし、自分にないものを吸収していくさまに触れると、
人間の創造性、可能性が無限大であることを実感せずにはいられない。

古典としての能楽を、世界に、未来に開いていく一方で、
逆に能楽自体、いにしえの舞楽を内包し発展させてきたことを示す津村。
一本の太い線でつながった「舞踊」の木に流れる樹液のようにして、
津村の好奇心は、過去から未来まで自在に旅を続けるのだ。

K's cinema(新宿駅南口、大塚家具新宿店からすぐ)では、
毎朝10時30分からの上映のみだが、
アフタートークがすごすぎる!

6/27(土)小野寺修二(演出家・俳優)× 津村禮次郎 × 三宅流
6/28(日)津村禮次郎 × 三宅流
7/01(水)ロバート・ハリス(DJ・作家)× 津村禮次郎 × 三宅流
7/07(火)平原慎太郎(舞踊家・振付家)× 津村禮次郎 × 三宅流
7/08(水)小谷野哲郎(バリ舞踊家)× 津村禮次郎 × 三宅流
7/11(土)小㞍健太(舞踊家・振付家)× 酒井はな(舞踊家)× 津村禮次郎 × 三宅流
7/12(日)森山 開次(舞踊家・振付家)× 津村禮次郎 × 三宅流
7/17(金)野田秀樹(演出家・役者)× 津村禮次郎 × 三宅流

行けるなら、毎日行きたい!
私が行った日はアフタートークなしの日だったが、三宅監督のあいさつはあり。
どんなジャンルであっても舞踊に、芸術に、文化に、人間に、関心のある人は、必見。

躍る能楽師サブ
  Ⓒ究竟フィルム KUKKYO FILMS

学芸員の「プレゼン」が圧巻! きっとあなたも絵が好きになる

NationalGallery2
Ⓒ2014 Gallery Film LLC and Ideale Audience.  All Rights Reserved.

監督・編集・録音:フレデリック・ワイズマン

配給:セテラ・インターナショナル

封切:1月17日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開


ストーリーとみどころ●
1842年創立の英国初の国立美術館、ナショナル・ギャラリー。
小さいながらも珠玉の美術品が揃うこの美術館に、
ドキュメンタリーの鬼才、フレデリック・ワイズマンが3カ月にわたり密着取材。
各作品と、美術館を支える人々にスポットライトを当てる。

単なる「バックステージもの」ではなく、
作品一つひとつの持つ魅力に焦点が当てられているのが
芸術を愛するワイズマンらしい。

特に、美術館の入場者に対し
実際に行われている10分間解説をそのまま撮影しているのだが、
この
「プレゼン」がとてもステキなのだ!
学芸員たちがその絵の中に何を発見し、
どんなきっかけで美術を愛するようになったのかを情熱的に語る。
彼らの「感動」が、美術品の芸術性と合体して
観る人々の心を揺り動かす様子は、
美術館が芸術や美の知への扉であることを証明している。

また、
絵画修復を手掛ける人々の驚愕の緻密さに
イギリス人らしさものぞいて微笑ましい。

最後に、英国ロイヤルバレエのダンサーが
ギャラリーの中でパ・ドゥ・ドゥを踊るが、
時を越えてそこにある絵画と現代の芸術家が並び立ち溶け合う瞬間には
何とも言えぬ美しさがある。
美術館という空間そのものが、すでに一級の芸術品であることを実感した。

3時間という長丁場で、ストーリーがあるわけでもないが、
意外にも長いと感じない。
ひとつひとつの作品に物語があるからだろう。

ロンドンに行ったら絶対ナショナル・ギャラリーに行って、
「10分間解説」を聞きたいと思う。

NationalGallery1
Ⓒ2014 Gallery Film LLC and Ideale Audience.  All Rights Reserved.

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Ⓒ2014 Gallery Film LLC and Ideale Audience.  All Rights Reserved.

*英国ロイヤルバレエのダンサーは、エドワード・ワトソンとリアン・ベンジャミン。
 リアン・ベンジャミンは、熊川哲也がロイヤルバレエ在籍中、何度もペアを組んだ人である。 

BBCのクルー渾身の3D映像で
アフリカの大自然の真っただ中に身をおく!


メイン画像
(C)BBC Earth Productions (Africa) Limited and Reliance Prodco EK LLC 2014



監督:ニール・ナイチンゲール/パトリック・モリス
配給:東宝東和  
共同提供:東宝東和/NBCユニバーサル・エンターテイメント/WOWOW
公開:5月2日(金)TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
公式サイト:http://nature-movie.jp/



みどころと解説●
BBCのEARTHが生み出した自然体感映画は
『ディープ・ブルー』『アース』『ライフ―いのちをつなぐ物語―』と
全部観ているが、3Dは今回が初めてだ。

森林から火山、砂漠、硫酸の池、乾期の平原、海中のサンゴ礁、
5000m級の高山と凍てつく星空、めもくらむような崖から落下する滝、などなど、
普通では足を踏み入れられないところも含め、
マクロとミクロのカメラが私たちを地球の不思議さへいざなってくれる。

特に圧巻だったのは、ビッグウェイヴのチューブの中に3Dカメラが入ったとき。
私はサーフィンをやらないが、
サーファーたちはこんな水のドームの中を入り込み、
奥行のある大きな波のトンネルを楽しんでいるのだと実感した。

一日で冬と夏が入れ替わるケニア山の様子も衝撃的だ。
植物は毎晩凍り、日の出とともにその氷が解けて水となる。
なんという壮大な、生の循環だろう!

そうした厳しい自然の中で、
ただ一瞬を生きるためだけに前に進む動物たち。
命がいとおしくなる映画である。

ナビゲーターは滝川クリステル。
GWに、子どもさんを連れていくのにちょうどよい映画だと思います。

サブ3
(C)BBC Earth Productions (Africa) Limited and Reliance Prodco EK LLC 2014
サブ2
(C)BBC Earth Productions (Africa) Limited and Reliance Prodco EK LLC 2014
 

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